「ラブライバー抗体検査センター」とは何だったのか

1月1日から2日にかけて沼津に「ラブライバー抗体検査センター」というものが出没していたらしい。名前だけ見るとラブライバーになっているかどうかを検査するための施設に聞こえるが、あくまでCOVID-19(新型コロナウイルス)の抗体検査ができるらしい。沼津ということでラブライブ!サンシャイン!!の聖地巡礼に来た観光客をターゲットにするために「ラブライバー」と冠した結果のようだ。

登場当時はTwitterアカウントまで存在していたのだが、2日の16時頃には既に消されている。

https://twitter.com/nmz_koutaikensa (跡地)

民間の検査という発想自体は、都内でもいくつかできている「保険適用はされないけど私費でPCR/抗体検査ができる場所」みたいな場所のノリっぽいのだが、色々とひどい点があるのでいくつか紹介しよう。

吹きさらしの検査場

まず出店形式についてだが「露店」で特にテントも何もない吹きさらしである。まあ風通しがいいことはいいのだが、こんな場所で医療検査をしろと…?しかも1月1日に満を持して初出店した場所は年末年始で休業していて誰も来ないであろう店の前。商売が下手すぎる。

縮小・画像の一部を筆者が加工

さらに上記の画像は例のアカウントが一番最初にツイートしていたものだが、露店の営業者と思わしき顔にはマスクはしているものの鼻を出しており、検査場あるまじき不衛生さである。自分なら間違いなく利用したくないね。

あと憶測ではあるが、写真にある後ろの店の出入り口の位置からして店の駐車場ではなく公道の歩道上でやっていた可能性が高い。この場所で露店を開くには道路占用使用許可が必要で、営業中は許可証を掲出する必要があるはずだが、そもそも取っているかは怪しい。またこの露店の後ろの店のTwitter担当の人もこの件に関しては何もツイートしておらず、そもそもお店に許可をもらっているのかも怪しい気がする。

検査費用と検査キットについて

次に抗体検査の費用と使っている検査キットについて。

画像をみると抗体検査キットと思われる箱に「GENEDIA」と読み取れるのでおそらくこのキットである。

GENEDIA というメーカーがあるのかと思ったが違って、箱の隅に書いてある GCMS が社名。調べると Green Cross Medical Science Corp という韓国の医療系の会社(?)が出てくる。ウェブサイトもあるが素直に検索に引っかからなかったし、たどり着いたらたどり着いたで謎にポップアップが大量に出てきて怖いのでリンクは貼らないでおくので各自参照されたし。

このラブライバー抗体検査センターで1回の検査にかかる費用は5,000円らしい(最初の画像参照)。保険非適用なのでしょうがないが気軽さとしては微妙な価格かな…。検査キットは上記のリンクで貼ったショップで20セットで72,600円で売られているので、原価は3,630円ぐらい。露店にしては利益率が高めな気がする(よくわかりませんが)。

ただ、1/1の朝方に出ている画像には価格のところにA4用紙を貼って価格を隠しているので無料で実施していた可能性がある(なんで?)。次の日の目撃情報では「新春特別価格」と称して3,500円でやっていたらしい。よほど人が来なかったのだろうか、打って変わって原価ギリギリの出血大サービスである。

なんだよ抗体検査の特別価格って

もう一つ驚くべきことにこの抗体検査キットは厚労省に認可されていないという事実もある。

精度自体に不備があるというよりあくまでマイナーすぎて見向きもされていない製造会社のキットなのではないかという気はするが、そもそもこの検査自体も勝手にやっているだけでさらにキットが適正かの保証もないため、検査結果も気休めにしかならず、実質おもちゃ遊びを5,000円払ってやっているようなものなのである…。

たった2日であっけなく散る

1/1はどれほどの人を集めたのかわからないが、Twitterで宣伝するとイラストカードプレゼントという企画をやっていたにもかかわらず、あまりツイートされておらず、人が集まらなかったように見える。まあ年末年始で休業中の店の前にわざわざ来る人も居なかったのだろうし(唯一来ていたのも単推しの熱心なファンだ)、そもそも普段その店の前は車は通れど人通りは少ない。

そして翌日の1/2は前日出店した場所から大きく場所を変えて人通りの多い沼津港のさかなや千本一の前にあるフリースペースを借りてでやっていたようだ。しかし人通りが多いことが災いして多くの人の目に止まり、あっけなくTwitterで炎上。しかしそこからの火消しも早く、16時頃にはアカウントを消し去ってしまっており、17時頃に筆者が現地に行った時には既に撤収されて跡形もなくなっていた。

誰がこの抗体検査センターをしていたのか

この怪しい露店を誰がやっていたのかという前に、最初に言っておきたいのは、初日の店も千本一も露店の運営には無関係そうであるという点。あくまで「ラブライバー抗体検査センター」と名乗る団体が場所を借りて(初日は怪しいが)営業をしていたということである。だからといって営業の許可を出したであろう千本一に非がないとは言えないと思うのだが、筆者が千本一の様子を見に行ったとき、何らかの事情説明が行われている雰囲気を感じた(あくまでその場の雰囲気から察したもの)ので、しかるべき関係各所にはもう既に情報が伝わっているものと思われ、今後何らかの釈明や説明がどこかから出てくるかもしれないので、この場での批難はしない。

あと現場で配布されていたイラストカードの絵師もおそらく無関係で、Twitterで版権絵をそもそも公開しておらず、おそらくこの露店の運営側が直接のコンタクトまたはpixivのリクエスト機能を開放しているのでそこから依頼しただけのようだ。

さて、じゃあ直接的に関わっていた人間は誰かという話だが、早くからこの炎上に気づいた人の一部はおそらくこの抗体検査センターの関係者の1人を容易に追いかけることができた。それはこの検査センターがツイートしていた「#沼津きらめかせプロジェクト」という謎のハッシュタグを最初にツイートした人物で、現在その人物は関係したツイートを全て消して責任の追求から逃れようとしていることが伺える。

この人物は note に「ビジネス基礎知識」と称するエントリーを多数投稿しており、アニメの大ファンであることを公言している。おそらく当の検査センターの企画立案にあたったビジネスアドバイザー的な立ち位置の人物で、沼津=ラブライブ!なので沼津×抗体検査=ラブライブ!×抗体検査という単純な発想だったのではないか。というかコンテンツの権利者の役割や立場も考えられない人間が「ビジネス基礎講座」をインターネットに発信するのか…。

さらにこの人物とは別に露店を営業するにあたって実際に店先に立つ店主となる人物が居た。この人物について追いきれていないが、戦術のビジネスアドバイザーが運営するアニメ好きのコミュニティの参加者と思われる。追って情報を集めているがどうもつながらないので誰か知ってたらDMなどで教えて欲しい。

結局この件の何が問題なのか

【ラブライバー】を冠することが問題なのかと言うと、このことに「違法性」はない。あくまで商標は「ラブライブ!」なので法的責任には問えない。あとラブライブ!サンシャイン!!のキャラクターが描かれたイラストカードを配っていたらしいが、まあこういった行為自体は聖地の沼津であれば公認・非公認問わず、ラブライブ!フィーチャースポットではよくみかける行為ではある。

ただそれらで忘れてはいけないのはあくまで版権元であるサンライズ含め関係各所の「黙認」の上に成されているということである。

沼津にある商店であれば誰でも使っていいのかというとそういうことはなく、商店側のラブライブ!サンシャイン!!というコンテンツへの理解(これは単に「ラブライブ!が好き」という気持ちだけでは成り立たない)と、沼津をラブライブ!サンシャイン!!というコンテンツとともに成長させようという版権元の協力・信頼関係の上で成り立っているものであるということを理解したい。そこに何も理解をせず、タダ乗りしようとコンテンツを勝手に使う者が現れたらつまみ出されて当然である。

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