リトルカブと僕の実家

いま、僕の実家にはリトルカブというスーパーカブの親戚みたいなやつが居る。

僕の実家は周りを田畑に囲まれたTHE・田舎で、帰省したときにスーパーやコンビニに行くための交通手段といえば、親のお下がりとして自分が学生時代に乗っていた軽四自動車だった。しかし就職して実家を離れてからは誰もその軽四に乗る人がおらず(バッテリーあがりを避けるためにたまに父親が乗ってくれていたらしい)、保険や車検による維持費だけがかかり続けるという状態だった。この車ももう買ってから10年ぐらい経ったものだったので、二束三文で適当に売り払うか廃車にするしかないかなと考えていると、ちょうど従兄に子供ができて出かけ用に使うための車を探しているらしかったので譲ることになったのである。

軽四を譲ったことにより、当然実家で使える車は1台減ることになる。これが結構問題だったのだ。

軽四を譲ってから1ヶ月後ぐらいに帰省したとき、親が車で仕事や買い物に行ってしまい、家に自分一人になった。そのとき初めて自分の移動手段がないことに気づいたのだ。最初にも書いたが実家は田舎なので、一番近くにあるコンビニに行こうにも徒歩で片道15分という不便極まりない状態なのだが、仕方なくまだ寒さ残る3月に歩いてコンビニに行ったが、周りは田んぼで風を遮るものはなく、終始冷たい風に当てられながら買い物に行ったらどうなるかはだいたい想像が着くだろう。

それから数週間ほどあと、僕の友人と会ったときに「学校を卒業して就職で県外に行ってしまったので、通学で使っていたカブが彼の実家で余っている」という話を聞きつけた。まさに渡りに船である。二輪車を冬に運転するのは寒いだろうが、ひたすら寒空のもとあるき続けるよりはいいだろう。なによりこれから春である。寒さ対策は冬がやってくる数カ月後に考えればよいのだ。などと御託を並べて言い訳をした結果、買い取ることになったのがこのリトルカブだ。

とまあ最初はあまり何も考えず、単なる交通手段として買ったカブだったのだが、これがカブというものに惚れ込むことになろうとは思っても見なかった。

僕がカブを運転するにあたって一つだけ問題があった。普通免許は持っているが、合宿免許だったので原付教習はふわっと流される形で実際に運転したことはない。つまり僕にとってエンジン付きの二輪車の運転はこれが初めてだったことだ。

危惧していた自体は的中した。いざ運転してみると、これがなかなか難しい。4輪は一応MTを持っているが、免許をとってからATしか乗ってなかったのでギアの使い方も忘れてしまっていたので、最初はギア変速をスロットル回しながらやってしまってつんのめったり、とっさにブレーキをかけようとしたときに前輪だけブレーキをかけてしまってスリップさせてしまったりで、一度乗るとヘトヘトになっていたのだが、コンビニや買い物でカブを使ったときのついでに無意味に町内をぐるぐるとドライブすることで、ようやくカブの運転に慣れることができた。

そして最近感じたこととしては「カブは完全なる機能美」ということである。

カブはMTなのでいちいち変速しなければならず、ATのスクータに比べればめちゃめちゃ面倒だし、見た目もビーノみたいにおしゃれでもなければモンキーみたいなかっこよさとも少し違う。

だけどもスーパーカブには日本で生きていくために必要なものが全部「ある」のだ。

アホみたいにトルクが強くて普段使わない1速とか、決して使いやすいとは言えないヘルメットホルダーとか、パンクしたら自転車屋で修理できてしまうことだとか。これらはすべて「仕事道具」としてスーパーカブを必要とする人たちに応えた結果だ。最初の写真なんかはホームセンターで買ったなんてことない収納用ボックスを後部に取り付けただけだが「あぁ…こういうカブ、田んぼの横で停まってるな」という雰囲気がある。カブはまさに日本の風景なのだ。ここまで強く日本に根付いているバイクなんてカブ以外ないだろう。

あと地味に嬉しかったこととして、父親も結構ノリノリで整備とかしてくれることだ。

僕が実家に居ない時なんかも町内会の用事とかで近くに移動するときにはカブに乗っているようだし、暇さえあれば洗車をしてピカピカにしている。僕が後部にボックスを取り付けた時なんかも、最初は取り付け方が甘く若干グラついていたのだが、ホームセンターでなにやら別の部品を買ってきて、しっかり固定しながらも簡単に脱着できるように改良したりと、父親自身もカブを使うことを結構楽しんでくれているっぽいのだ。

これからなかなか帰省することもできない距離で、若干心配していたのだけども、こういった楽しみを見つけてくれることは、不安を拭うことにもつながっている。

リトルカブを買った最初は、僕だけが恩恵に預かるものかと思っていたが、結果として実家の家族全体にいい効果を生み出していて、これからも彼の活躍には期待したいところだ。

というわけでリトルカブよ、ありがとう。次の帰省したらオイル交換してやるからな。

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windyakin (Takuto Kanzaki)

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